妻と娘のこと

この春、妻が逝った。病死だった。
ずっと一緒にいたのに、彼女の不調に気づけなかった。
もっと早く気づけていたら。そんな無意味なことをいまだに考える。

しかし、いつまでも落ち込んではいられない。
立ち直って前に進まなければならない。それが、生きている人間の義務だ。
だが娘は違う考えらしい。
「お母さんのこと、忘れようとしているでしょ」。そう言われた。

そんなことはないが、彼女にはそう見えるのだろう。
最近は毎日のように喧嘩している。

だが、今はこれでいいのだと思う。
大切な人が亡くなったときに何を感じるのかは、人それぞれ。
それぞれが違う形で、その人を偲んでいけばいい。

漫画ならここで、親子の劇的な和解が描かれるんだろうが、現実はそううまくいかない。
それでもいつか、娘とわかり合える日が来ると信じている。